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櫨ノ谷便り

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西日本新聞

西日本新聞元日佐賀県版に、当窯元の記事が載りました。
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(以下、転載)
古唐津の原料は?
有田焼を指で弾けば、チンという金属音がする。陶石を原料とする「石もの」(磁器)の特徴だ。一方、粘土が原料の「土もの」(陶器)である唐津焼は「ゴツッ」と重い音。ところが、源流の古唐津は違う音がするという。古唐津の原料は土?あるいは石?
「私の唐津焼は、石が原料なんです」。唐津市相知町佐里に工房を構える陶芸家、梶原靖元さん(49)は自作のぐい呑みと皿を手に取り、軽くぶつけた。「カツン」。一般的な唐津焼とも有田焼とも確かに音が違う。「400年前の古唐津と同じ音です」と梶原さんは自信たっぷりに説明する。佐里周辺には、唐津焼発祥の地とされる岸岳古窯跡が広がるだけに説得力を感じるが、石なら有田焼のように「チン」と響くはずではないか。
「石と言っても、陶石ではない。砂岩なんです」。陶石は火山活動の熱で生じた変成岩。砂岩は堆積岩の一種で、粒子の密度が低い、しかし唐津焼の原料である粘土よりもちろん硬い。「それでこんな音になる」と梶原さんは語る。
安土桃山後期から江戸初期にかけてつくられた古唐津は、多くの茶人や文人に愛された。その後いったん廃れたが、昭和になって故中里無庵(十二代太郎右衛門)氏の尽力で再び隆盛期を迎え、現在に至る。
だが、「古唐津と現代唐津焼は違う」という指摘は伏流水のように存在してきた。ざっくりとした土の味わいや温かみが陶器の魅力だが、日常使いでは「水が漏れやすい」「欠けやすい」といった声がつきまとう。ところが、400年を経た古唐津は、今なお硬質で、水漏れしにくいのだ。
古唐津の再現を目指し、多くの陶芸家が試行錯誤を繰り返してきた。梶原さんもその一人。焼成温度を高め、長時間焼き締め、古窯跡周辺の土を使ってみた。だが、古唐津の高みには手が届かない。悩み続けた梶原さんに転機が訪れたのは約10年前。知人の採石業者がポロリとこぼしたひと言だった。「古唐津は砂岩ですよ」石のプロの言葉に動かされ、梶原さんの挑戦が始まった。
実はそのころ、既に砂岩を使った器作りに成功していた人がいた。伊万里市南波多町高瀬に窯を構える吉野靖義さん(70)。「古唐津砂岩説」を耳にして、唐臼という装置で砂岩を細かく砕き、独自の工程を加えて粘度を上げた。
「古唐津の原料は主に砂岩」ど断言する吉野さんは、「すぐに形成できる粘土と違い、砂岩は粘りけを出すだけで半年以上かかる。初期古唐津の手間のかけ方には敬服する」と往時に思いをはせる。
梶原さんも研究を重ねて約5年前に砂岩による器作りに成功し、勉強会などでその技術を陶芸関係者に積極的に公開。砂岩を使う陶芸家が徐々に増えてきた。
「古唐津砂岩説」の正否は、今後の学術研究を待つ必要がある。だが、絵唐津、朝鮮唐津、粉引唐津などバラエティーを誇る唐津焼に、「砂岩の唐津」という新しい魅力が加わりつつあることは間違いない。
by hazenotani | 2012-01-03 23:42 | 櫨ノ谷窯について | Comments(0)
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